KIYOMI SOKOLOVA-YAMASHITA

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ソコロワ山下聖美 文芸研究室

林芙美子はダラットを訪れた①

いったんホーチミンを離れ、問題の地、ダラット Dalat。
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ダラット上空。
林芙美子の代表作『浮雲』にはダラットが描かれる。
しかし、芙美子が南方訪問時代にダラットを訪れたのか
否かは不明で、研究者の間でも意見が分かれている。
『浮雲』のなかで次のような場面がある。
「高原のダラットの街は、ゆき子の眼には空に写る
蜃気楼のようにも見えた。ランビァン山を背景にして、
湖を前にしたダラットの段丘の街は、ゆき子の不安や
空想を根こそぎくつがえしてくれた。以前は市の駐在部であった
という白亜の建物の庭にトラックがはいってゆくと、
庭の真中に日の丸の旗が高くあげてあった。
地方山林事務所と書いた新しい看板が石門に打ちつけてある。
(中略)
茂木技師や、瀬谷たちは、ダラット第一級のホテルである、
ランビァン・ホテルに牧田氏の自動車で引きあげて行った。」
当時のダラット第一級のホテルは正式には
「ランビァン・パレス」(Langbiang palace)である。
このホテルは、1995年に「ダラット・パレス」
となり、現在は「ソフィテル・ダラット・パレス」
となっている。
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1922年に創業された当時のランビァン・パレス。(パンフレットより)
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現在のソフィテル・ダラット・パレス。(パンフレットより)
夜、この実際にこのホテルを訪れてみた。
支配人の方がていねいに案内してくれた。
ホテルの正面玄関からランビァン山を眺められ、
湖も見えるという。
(しかし現在は、木々に多少さえぎられ、山はみえづらい。
かつ、天気の良い日にしか見えない。)
まさに、ゆき子が到着した「白亜の建物」のモデルが
旧「ランビァン・パレス」、現在の「ソフィテル・ダラット・パレス」であると思われる。
林芙美子は実際に旧ランビアン・パレスに来たのだろうと直感した。
そしてここを「地方山林事務所」の舞台とした。
一方で、男たちが帰っていくホテルとして
「ランビァン・ホテル」を登場させた。
現在の「ソフィテル・ダラット・パレス」の図書室には『浮雲』の文庫本があった。
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このホテルについては
明日、その歴史ある内部と正面玄関からの
眺めを紹介したいと思います。

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